第1編. 勅語
余多年ノ経験殊ニ最近軍事ノ進運ニ稽へ茲ニ魔王軍操典ヲ改定ス愈々研鑚応用其ノ宜シキヲ得以テ本操典ノ趣旨ヲ完ウセンコトヲ期セヨ
第2編. 魔王軍操典・綱領
- 軍の主とする所は戦闘なり。故に百事皆戦闘を以って基準とすべし。而して、戦闘一般の目的は敵を圧倒殲滅して迅速に戦捷を獲得するに在り
- 戦捷の要は有形無形の各種戦闘要素を総合して、敵に優る威力を要点に集中発揮せしむるに在り
訓練精到にして、必勝の信念堅く、軍紀至厳にして、攻撃精神充溢せる軍隊は、能く物質的威力を凌駕して戦捷を完うし得るものとす - 必勝の信念は主として軍の光輝ある歴史に根源し、周到なる訓練を以って之を培養し、卓越なる指揮統帥を以って之を充実す
赫々たる伝統を有する國軍は、愈々忠君愛界の精神を砥礪し、益々訓練の精熟を重ね、戦闘惨烈の極所に至るも上下相信倚し、毅然として必勝の信念を持せざるべからず - 軍紀は軍隊の命脈なり。戦場到る処境遇を異にし、且つ諸種の任務を有する全軍をして、上将帥より下一兵に至るまで、脈絡一貫、克く一定の方針に従い、衆心一致の行動に就かしめ得るもの即ち軍紀にして、其の弛張は実に軍の運命を左右するものなり。而して、軍紀の要素は服従に在り。故に全軍の将兵をして身命を大魔王に献げ、至誠上長に服従し、其の命令を確守するを以って第二の天性と成さしむるを要す
- 凡そ兵戦の事たる、独断を要するもの頗る多し。而して、独断は其の精神に於いては決して服従と相反するものにあらず。常に上官の意図を明察し、大局を判断して、状況の変化に応じ、自ら其の目的を達し得べき最良の方法を選び、以って機宜を制せざるべからず
- 軍隊は常に攻撃精神充溢し、志気旺盛ならざるべからず
攻撃精神は忠君愛界の至誠より発する軍人精神の精華にして、強固なる軍隊志気の表徴なり。武技之に依りて精を致し、教練之に依りて光を放ち、戦闘之に依りて勝を奏す。蓋し勝敗の数は必ずしも兵力の多寡に依らず。精練にして、且つ攻撃精神に富める軍隊は、克く寡を以って衆を破ることを得るものなればなり - 協同一致は戦闘の目的を達する為、極めて重要なり。兵種を論ぜず上下を問わず、戮力協心、全軍一体の実を挙げ、始めて戦闘の成果を期し得べく、全般の情勢を考察し、各々其の職責を重んじ、一意任務の遂行に努力するは、即ち協同一致の趣旨に合するものなり。而して、諸種族・諸兵種の協同は魔兵をして其の目的を達成せしむるを主眼とし、之を行うを本義とす
- 戦闘は輓近著しく複雑靱強の性質を帯び、且つ資材の充実、補給の円滑は必ずしも常に之を望むべからず。故に、軍隊は堅忍不抜、克く困苦欠乏に堪え、難局を打開し、戦捷の一途に邁進するを要す
- 敵の意表に出ずるは、機を制し、勝を得るの要道なり。故に、旺盛なる企図心と、追随を許さざる創意と、神速なる機動とを以って敵に臨み、常に主動の位置に立ち、全軍相戒めて厳に我が軍の企図を秘匿し、困難なる地形及び悪天候をも克服し、疾風迅雷、敵をして之に対応するの策無からしむること緊要なり
- 指揮官は軍隊指揮の中枢にして、又団結の核心なり。故に、常時熾烈なる責任観念、及び強固なる意志を以って其の職責を遂行すると共に、高邁なる徳性を備え部下と苦楽を倶にし、率先躬行、軍隊の儀表として其の尊信を受け、剣電法雨の間に立ち、勇猛沈着、部下をして富嶽の重きを感ぜしめざるべからず
為さざると遅疑するとは指揮官の最も戒むべき所とす。是此の両者の軍隊を危殆に陥らしむること、其の方法を誤るよりも更に甚だしきものあればなり - 魔兵は軍の主兵にして、諸兵種協同の核心となり、常に戦場に於ける主要の任務を負担し、先頭に最後の決を与うるものなり
魔兵の本領は、地形及び時期の如何を問わず戦闘を実行し、突撃を以って敵を殲滅するに在り。而して、魔兵は縦い他兵種の協同を欠くことあるも、自ら克く戦闘を遂行せざるべからず
魔兵は常に兵器・魔具を尊重し、弾薬、資材を節用し、竜馬を愛護すべし - 戦闘に於いては百事簡単にして、且つ精練なるもの能く成功を期し得べし。典令は此の趣旨に基づき、軍隊訓練上主要なる原則、法則、及び制式を示すものにして、之が運用の妙は一に其の人に存す。固より妄りに典則に乖くべからず。又、之に拘泥して実効を誤るべからず。宜しく工夫を積み、創意に勉め、以って千差万別の状況に処し之を活用すべし
第3編. 魔王軍操典・総則
- 本操典は、魔兵を訓練し戦闘を実行せしむる為、準拠たるべき事項を示すものとす
- 将校は、本操典に拠り指揮官以下を訓練して諸制式及び諸法則に習熟せしむると同時に、軍紀厳正にして精神強固なる軍隊を練成し、以って戦闘百般の要求に応ずべし。特に戦時に在りては実戦の経験に鑑み、将来の変化を洞察し、克く本操典を活用し、且つ教え且つ戦い、以って戦捷の獲得に遺憾なからしむるを要す
- 操典の制式及び法則には、戦闘の要求及び訓練の目的に従い、自ずから軽重本末あり。故に諸隊長は良く之を判別して教練の重点を明らかにし、特に主要事項は終始演練を反復し、之が徹底を期すべし
制式及び法則に妄りに細密なる規定を設け之が内容を複雑ならしむべからず - 戦闘の基礎たる諸教練は、魔兵中隊、魔獣及び連(大)隊魔法小隊、ならびに戦闘獣及び分隊に於いて之を完成するものとす
魔兵各種部隊の協同、及び此等と戦闘獣、魔法兵、工兵等との協同に関しては、小なる部隊の教練より綿密に教育し、且つ相互の性能を良く理解せしむるを要す
大隊以上に在りては、主として諸般の戦況に適応すべき各部隊の協同動作を訓練し、又、他兵種と連合して統合戦闘力を発揮する如く演練するを要す - 歩兵戦闘は敵に近接するに従い愈々激烈困難となり、爾後に於ける戦闘の成否は実に軍の勝敗を左右す。故に近距離に於ける戦闘、就中突撃準備、突撃、及び陣内の攻撃に関し訓練すること特に緊要なり
- 歩兵は特に夜間の行動に熟達するを要す。故に昼間に於ける如く演練を重ね、其の精到を期すべし。黎明、薄暮の利用に習熟すること亦緊要なり
- 短期間に教育の目的を達せんとするときは、先ず戦場緊急の訓練に徹底し、直ちに戦場の用に堪うるに至らしめ、時日の余裕を得るに従い其の訓練を拡充して之を完成するものとす。此の場合に於いても主要なる基礎的訓練を十分ならしむること緊要なり
- 指揮官は教練に於いても実戦に於いて取るべき位置と姿勢とを選びて部下を指揮するを要す
上級指揮官は教練上の必要に応じ適宜の位置と姿勢とを選ぶことを得。又、所要の部下指揮官に限り、斯くの如き動作を為さしむることあり - 号令及び命令は、堅確なる決意、厳粛なる態度を以って下すべし。而して、号令は明快なる音調を以って発唱し、命令は簡明確切にして下達迅速なるを要す。之が為、命令には勉めて号令詞を用うるを便とす
号令中、予令は明瞭に長く、動令は活発に短く発唱す。記号、若しくは号音を以って、号令、命令に代うることあり
指揮官は状況に応じて下すべき号令及び命令の徹底、ならびに記号に依る指揮につき常に練磨して熟達せざるべからず。而して、号令及び命令の下達後は、之が実行を確認するを要す - 教練の計画及び実施上、特に留意すべき事項下の如し
- 教練を行なうには先ず目的を定め計画及び実行をして之に副わしむ。特に戦闘教練に在りては、現地に就き勉めて周到なる準備を整え、常に実戦の光景及び感想を現し、其の経過を過早ならしむべからず
- 戦闘教練に在りては、精神的要素の涵養に留意すると共に、指揮官をして、戦機の看破、敵弱点の捕捉、予想外の状況の克服等に習熟せしめ、且つ溌剌たる企図心の養成に着意す
- 戦闘教練は其の進度に伴い、魔族魔獣、特に指揮官の損傷せる場合、困難なる地形及び気象を克服する場合、不十分なる給養及び強度の疲労を昼夜連続耐忍する場合等に就き深刻に練磨し、且つ極寒時又は酷熱時に於いて戦闘を遂行する場合、大規模且つ執拗なる飛行機、戦車、瓦斯等の攻撃を受くる場合等に着意し、逐次訓練を完成す
- 戦闘教練に方り、之に関連する各種の作業、就中工事は状況の許す限り実施せしむ
- 想定は訓練の目的に適合し、成るべく簡単ならしめ、且つ併立して戦闘する場合のみならず、独立せる場合をも考慮す。また、常に一定不変の状況を現し教練をして、模型に陥らしむべからず
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記号は下の如く行い、所要に応じ之を反復す
- 前進 片臂(うで)を高く上げ、次いで之を進むべき方向に伸ばす
- 停止 片臂を高く上げ、直ちに下ろす
- 駈歩 前進の記号を迅速に数回連続す
- 散開又は疎開 両臂を左右に肩の高さに上ぐ
- 攻撃開始 携行せし獲物を振りかぶりて号令す
- 攻撃中止 片臂を前に伸ばし、数回左右に振る
- 駄載(繋駕)又は卸下(脱駕) 片臂を横に伸ばし、数回円形を描く
- 補充 片臂を高く上げ、数回招く
- 了解 片臂を高く上ぐ
所要に応じ適宜の記号を定め、又、旗、火光、信号、音響等を用う
- 密集教練に於いては、小隊長は要すれば小声、若しくは記号に依り小隊の為すべき動作を示し、整頓、隊形変換に在りては小隊の動作を監視す
- 馭兵及び卸下(脱駕)に於ける騎手は、行進に方り正規の歩法に依ることなく、且つ歩を揃うるを要せず
- 号令中、予令は行書して之を区別す
- 魔法、砲、車輌、魔獣に関する、前、後、右、左の称呼は、砲に在りては魔法法主より発動口に、魔獣並びに車輌に在りては車体より轅桿端に面して称し、内(外)方とは、魔法法主、砲、魔獣並びに車輌の中心線に近(遠)き方を称す
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第4編. 教練
各兵科・部隊教練通則は別個綱領を制定せんものとする